デルフィニア戦記
著者 茅田砂胡
出版社 中公文庫
こんな人にオススメ
- 時間を忘れるほど、没入感のあるストーリーが読みたい
- 登場人物の精神面が強く、仲間内での裏切りがないので、暗い気持ちになりにくい
- 自然と敬語が覚えられる
本のご紹介
大きな失敗をしてしまった日や、とても傷ついてしまった日。
何度も頭の中でその時のことを繰り返してしまって、全然落ち着かないし、眠れない。
ずっと嫌な出来事を反芻するくらいなら、
いっそ物語に夢中になったほうが健全だと店主は考える。
物語の中に自分の求める答えがあるわけではない。
しかし、同じところをぐるぐる回るネガティブワールドにはまって
いたずらに自分を傷つけるよりはマシなのではないだろうか。
そんな悪循環な思考回路からちょっと抜け出すくらいの力が物語にはある。
ご紹介するのは「デルフィニア戦記」。
全18巻。長い。
しかし、4巻で一区切りがつくので、まずは手に取ってみてほしい。
物語は、故国を追われた国王ウォルが、追手に殺されかけているところから始まる。
逃げ込んだ花畑の中で、そこで眠りこけていた少女リィと出会う。
12,3歳くらいに見えるリィは凄腕の剣の使い手で、
10人もいた曲者をウォルと協力してなんなく返り討ちにする。
剣豪であるリィは、自分はこことは違う世界から来て
少女の見た目をしているが、つい先ほどまで少年の身体だったという。
馬よりも早く走れて、頭も大人の何倍もキレる。
あやしいを通り越して、薄気味悪いほど人間離れしている。
しかし、ウォルは自分を助けてくれたリィを信じた。
多少変わっているところはあるが、目の前の少女は忌まわしいものには見えず
それで十分だったのだ。
そんな2人を中心とした王座奪還の物語である。
登場人物は剣の腕など物理的にも強いが、メンタルもとんでもなく強い。
超合金でできているものばかりだ。
あと、口の回る者も多い。
軽快なやり取りや言い回しに、外で読まないほうがいいと一言伝えたいくらい
笑い転げることも多々ある。
物語の冒頭は、国に追われ、孤立無援という絶望的な状況だが
主人公たちに悲壮感があまりないので、暗い気持ちになりにくい。
ただし、軍記物語である以上、登場人物の多少の生き死にはあるので苦手な人は注意が必要だ。
余談だが、王族が出てくる物語は上下関係がはっきりしているので
物語を読んでいるだけで、敬語が自然と覚えられる。
店主はこの本で覚えたといっても過言ではない。
ただし「初めまして」とだけいいものを「お初にお目にかかります」と
時代錯誤な言葉使いになってしまったこともあるので
あくまでもおまけ程度に思っておいてほしい。
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